朝の情報番組のインタビューで、ボーナス時期に支給額を聞かれ50万だの100万だのさらっと答える人々。毎年正月にハワイやオーストラリアなど海外旅行に行く人々。ブランドバックや高級車を所持する人々。一面黒の壁紙に覆われた、無機質な間接照明だらけの、カレーの匂いなど漂って来そうにもない新築一軒家にすむ人々など見るといつも思う
「みんなどうしてそんなにお金あるの?」
私は高校の時はバイトづくめだったし、社会人になってからも転職はすれどフルタイムでずっと働いてきたというのにお金がない。おそらく真面目にコツコツと貯金していれば低収入といえど老後資金の2000万円くらいは貯まっていたのかもしれないが、令和2年9月の貯金残高を見てみるとたったの8269円。ぎりぎりビジネスホテルには泊まれそうだが、素泊まり以外の選択肢がない。どうしてこんなにお金がないのか…それはひとえに私が、美容にのめり込んで出費してきたからだ。エステに通い、脱毛サロンに通い、スキンケアや美容家電にかたっぱしから散財してきた。完全に身の丈に合わない出費を繰り返し、ふと気付いた時には残高8269円。この美容沼にひとたび足を踏み込むと非常にやっかいだ。次から次へと新商品が出て来て、CMやインターネットを見るたび購買意欲を掻き立てられ、もっともっとと奥深くに足を踏み入れてしまう。新しいスキンケアを注文し、届くまでの待ち遠しさ。届いて箱を開けるときの高揚感。今日洗顔したらあの美容液が待っていると思うと、期待に浮足立ってしまう。私の欲求はエスカレートし、1本1万~2万円もする美容液を数え切れないほど使用してきた。
そんな美容生活を繰り返して来たのに、今の私ときたらどうだろう。鏡の中の顔はお世辞にも40代には見えない。きっちりアラフォーづらである。彫刻刀で掘ったような遠目にも分かるほうれい線、目の周りのおびただしい数のちりめんジワ、元気に繁殖を続けるばかりのシミ。いったい今まで美容にかけたお金はどこに消えたのか。30年間オロナインオンリーでも今と変わらなかった気がする。
この前など、加工なしの写真が知人から送られて来た時、私に良く似たばあさんがいるなと思ったら私だった。嘘だろ⁈なんてこったい?と衝撃を受けた。今までの美容代がどこにも行かされていないではないか。
この年齢で貯金8000円台。今の車が故障しても中古自動車すら買う額がない。常に財布の中には小銭だらけ。もし今財布を強盗に盗まれ、ニュースで300円の入った財布を盗まれ…などど放送されたら恥ずかしい。どうにかなるさと今まで生きてきたけれど、さすがに現実を見なければ。崖っぷちにいてあと一歩後ずさると真っ逆さまですよという状況でようやく私は思い立った。
そうだ!マネ活しよう!(遅いって)
そこで私がまず始めた事は、マネ活に関する徹底的な情報収集だった。マネ活に関するインターネットや書籍をとにかく見まくった。その書籍にお金をかけるのは本末転倒なので、新品購入ではなくメルカリで購入したり、立ち読みで済ませたり(店員さん、ごめんなさい)図書館で借りるなどした。次にした事は情報の封印だ。目に入るから欲しくなるのだ。そもそも初めから知らなければ欲しくもならない。そのためには今まで見ていたSNSの美容系のものは一切見ないようにした。必ずチェックしていたユーチューブの登録を解除し、美容関連の動画が出てくるとおすすめに表示しないにする。ドラッグストアに入っても目移りしないように、目的の品物までまっしぐら。こんな早歩きの殺気だった女には美容部員も話かけてこない。そして化粧品のCMはすぐさまチャンネルを切り替える。一番信用出来ないのは自分の理性だ。すぐ欲に飲まれてしまう弱い意志を刺激しないよう、欲しくならない環境作りを徹底した。そんな生活を続け、ようやく遅すぎるマネ活道を歩み始めた私であった。


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