約半年ぶりくらいにマッチングアプリの相手と会った。アプリを使い始めて早5年。その間に出会った人数が、脳内だけで数えきれなくなったので、書き出してみた。名前はほとんど覚えていないので、特徴や居住地など、拙い記憶を辿りながらの作業である。イタ車、漁師、タッチ、逆切れトドック、ヤリモク、マザコン…など書き出して行くと最終的に15人と出会っていた。特徴なのか悪口なのか判別が微妙ではあるが、強く印象に残ったのだから仕方がない。こんなに出会っているのに、その中の4人と付き合って2,3ヶ月しか続かなかった。私にはマッチングアプリは向かないのでは?といい加減気付いた方が良いのかもしれない。それなのにまた会ってしまった。
彼は一つ年下で、名前をT君と言う。実際に会うまでに、メールのやり取りが2か月間くらいあった。その間に得た情報で、彼は東京出身で、大手酒屋の管理職であり転勤族である。青森から2年前に私の住む街に転勤してきたとの事だった。バツイチで元の奥さんとの間に子供はなく、趣味はサウナや神社巡り。お酒好きという共通点があった。ラインの文章からも真面目さが伝わってくる。毎日「おはよう」「こんにちは」「こんばんわ」のラインを欠かさないマメな人である。プロフィール写真はというと、ガラケー時代の写真を載せたのか?と思うほど不鮮明であった。年齢も20~30代に見える。しかし50歳超えの女が、アプリで同じ市内の人とマッチングし、ライン交換し、メッセージのやり取りを2か月以上続けられている時点でかなりの確率なのだ。ここにたどり着くまで、何本の矢を放って来たことか…見た目がどうのと贅沢はいってられない。
約束当日、天気にも恵まれ5月の心地良い気温の中、私は待ち合わせ場所へと向かった。彼の車は市内のナンバーではなかったので、すぐに見つけることが出来た。車に乗り込み、はじめましてと改めて挨拶をする。プロフィール写真は、やはりかなり昔のものであった。恐らく20年以上は経過しているだろう。いや、もっと正確に言えば、かろうじて面影を残しているレベルで変貌していた。まず体型がかなりふくよかになっていた。そして頭頂部の髪は、生まれたての赤ん坊のそれのように、ふわふわと頼りなげに生えていた。どうして助手席で頭頂部まで確認出来たのか。それは腰の低い彼が、ペコペコと何度も頭を下げるものだから、嫌でも目についてしまったのだ。しかし私とてシワとシミだらけで、加齢による変化はお互い様である。気を取り直し食事に行くことにした。T君はまだこの街に詳しくないため、私のおすすめの店へ向かった。オレンジ色の壁が特徴の、こじんまりした可愛い洋食屋である。そこの主人は以前トンカツ屋で働いていたので、揚げ物が特に美味しくお気に入りのお店であった。
ランチメニューのミックスフライ定食を注文し、私たちは話をしながら料理を待った。改めて向かいに座った彼をちらちらと観察する。どこかで見たような顔立ちなのだが、どうしても思い出せない。そういえば…以前にもマッチングアプリで会った人を連れてきた事があり、彼が3人目だった事を思い出す。店の人は私の顔を把握しているだろうか…急に不安になった私は終始顔を伏せ気味で食事を済ませた。
食事を終え、特に行く場所も決めていなかったので、田舎道をドライブした。山道を車で登り、見晴らしの良い展望台があったので、自分たちの住む小さな街を眺めた。高い所から見下ろすと崖の上に立っているようだ。崖と言えば船越英一郎だ。あぁそうだ!と唐突に私は思い出す。この人が似ているのは船越英一郎だ。胸につかえた塊がストンと落ちたような気分だった。船越似のT君はラインの文章通りの真面目で優しそうな人だった。私たちは次の会う約束を済ませ帰宅の途についたのであった。


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