気弱人間

私はとにかく気が弱い。常にびくびくしているせいか、小学生の頃は軽いいじめのようなものも受けた。みんなで寄ってたかってというよりは、ある特定の勝気でジャイ子タイプの人間に、なにかと目を付けられた。小動物のように怯えたりビクビクする様が、サディスティック欲を満たすのに丁度良かったのかもしれない。何人かの歴代ジャイ子達は私の頭を叩いたり、足を引っかけて転ばせたりした。もしくはコブシを振り上げて私を威圧し、目をつぶり亀のように首を引っ込める私を見て、腹を抱えて大笑いという事もよくあった。あの時はいじめという自覚はなかった。他の級友の顔や名前はうろ覚えなのに、ジャイ子のくるくる過ぎるパーマ頭や、ちびっこ版大川栄作のような巨大鼻、名前や家の場所まで鮮明に覚えている。これがトラウマというものかと今さらながらかみしめている。


50歳を過ぎた今でも、長年培ってきた気弱っぷりは健在だ。まず車の運転である。どう考えても強引で理不尽な割り込みをされても、怒り慣れしていないためすぐ反応出来ない。助手席の友人に「危ない!クラクション!」と指示され慌てて鳴らした時には、相手の車ははるか遠くという事もたまにある。これでは単に操作ミスでクラクションを鳴らしてしまったおっちょこちょいの人である。また以前、相手側に一時停止のある信号のない交差点で、自転車が一時停止を止まらず走って来た。慌てて急ブレーキを踏み前方を見ると、相手は小学生の男子であった。通常自転車は軽車両なので、本来向こうが一時停止すべきである。それなのに相手の自転車少年は、通りすがりに肩がぶつかったチンピラ並みに「どこ見て走っとんじゃワレ~!」顔で思い切りメンチを切ってきた。当然歯向う事も出来ない私は、すいませんすいません…とペコペコ頭を下げ退散する始末。小学生だから交通ルールを知らなかったとしても、どうも釈然としない。今でもその一時停止を通る度に(通勤道路なのだ)チンピラ小学生を思い出し不快になる。ストレスが溜まる一方なのでその発散法として、往復ビンタを食らわせる妄想で気を晴らすという気弱人間ならではの解決法をとっている。


そしてある時は、スーパーでの会計時の事。お札をトレイに置き、端数があったため細かいお金がないかなとお財布を探っていたら、学生っぽいバイトの子に「もうレジ打っちゃったので無理です」とバッサリ断られてしまった。あっはい…と引き下がったが、電卓はないのか?引き算は出来ないのか?と悶々としながら帰路に着いた。
先週では観光スポットの湖に友人と出かけた際、友人と湖を眺めながらキレイだね、吸い込まれそうだね、などと普通に会話をしていた。するといつの間にか隣に立っていた、同じく湖観光をしに来ていた中年女性に「今から動画撮るんで10秒間静かにしてもらえますか?」と指でシーッの合図をされてしまった。私たちは押し黙ったが、人にシーッとされたのは学生以来かもねと後に友人と語った。本来「指でシーッ」は静かにすべき場所、図書館や美術館などの室内で騒いだ時にされるしぐさではないのか…

もはや気弱界のレジェンドと言っても過言ではないこの私。逆に人に怒ったり注意をしたりという行為がとても苦手である。しかし社会で生きてく上で、どうしても注意せざるをえない状況に出くわすこともある。昔バイト先の書店で、禁煙なのに煙草を吸いながら入ってくる輩がいた。たまに見かける、タトゥーを見せたいがために、季節外れにタンクトップを着るタイプの輩である(表現だけは強気)これは店員として止めなければならない!勇気を振り絞り「すいません、おタバコはお控えください」と蚊の鳴くような声量で注意した。幸い輩は渋々出て行ったが、もはや心臓はバクバクで飛び出しそうな勢いである。トイレで乱れた呼吸を整えながら、こんなに注意が苦しくて疲れる行為なら、もうこんな場面には遭遇したくないとしみじみ思ったレジェンドなのであった。

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