マッチングアプリ歴も気付けばもう5年。いまだに安定したお付き合いには及ばず、婚活継続中の私である。今までで何人の人と会ったのか数えてみることにした。昨日の事すら忘れているのに、5年もの記憶をたどるのは容易ではない。当然名前も覚えておらず、特徴別に書き出してみる。イタ車男…一円単位割り勘男…女日照りの辛抱たまらん男…といった風に。数えた結果14人だった。5年という経験のわりに以外と少ないように思う。それというのも、年中婚活してる訳ではなく、大型連休の時、あまりの予定のなさに寂しさを覚え、ふと思い立って衝動的に登録するというパターンが多いからだ。そしてその不真面目さも手伝って、いつまでたってもそれらしいお付き合いも出来ず、フラフラと独り身生活に至っている。今年の連休にも例によって寂しさに襲われ、マッチングアプリに登録した。そしてマッチングした人と会う約束まで取り付けた。
彼(A君とする)は10歳年下の41歳。最初はあまりの歳の差に、私へのイイねも冷やかし半分で、すぐに連絡が来なくなると思っていた。しかし思いの他とんとん拍子で話はすすみ、待ち合わせ場所と時間を決めいよいよ会う当日となった。15回目ともなると緊張もさほどない。気合度で言えば町内会の忘年会くらいの、中の下くらいのモチベーションで待ち合わせ場所へ歩いて向かった。その日A君は、午後から会議があるとの事で、朝の9時から午後1時くらいまで会う予定である。私が先に到着し待っていると、やがてA君が車で現れた。前もって車種や車の色も聞いていたし、写真の交換でお互いの顔も分かっていたためすぐにお互い気付き、車に乗り込んだ。
一通りあいさつをして、さてどこに行こうかという話になった。お昼にはまだ時間に余裕があったためドン・キホーテに行った。そこで学んだのは、初対面の相手とドン・キホーテに行ってもさほど楽しくないという事であった。そもそも買う目的もないし、自分の興味のある場所で立ち止まっても、A君がぎょっとするほど無反応だったり、どこに立ち寄ったらいいかも分からず、ただいたずらに売り場をグルグルと回るだけというドンキ内ウォーキングで30分費やした。足が疲れたので車に戻り、適当に街を徘徊し、お昼になったので予約してあった回転ずしへ向かった。それまでで分かったのは、彼がひどく甘えん坊だという事だった。外では男として立ててほしいが、内ではとにかく甘えたいので年上女性が絶対条件だそうだ。その甘えん坊ぶりは会って数分からすでに発揮されており、口をとがらせたり、からだを摺り寄せてきたりと、年下男子というよりは大きな赤ちゃんと過ごしているようだった。
回転ずしは予約ということもあり、すぐに着席することが出来た。食事中もA君は、口の周りについたご飯粒を指摘すると「取ってくれないの?」などとジャイアントベイビーっぷりを発揮し、私の顔を何度かひきつらせた。そのうちベイビー(A君)の携帯が鳴り、何やら仕事がらみの会話をしている。電話を切るとベイビーは上目遣いで「もっと僕と一緒にいたい?」とたずねてきた。予定していた午後からの会議が急遽中止になったそうだ。私はこの2時間あまりで、5歳くらい老けたんじゃないかと錯覚を起こすほど疲れ果てていた。そして「母の買い物に付き合わなくちゃいけないから帰るね」という無難な嘘をついた。するとベイビーは口をとがらしすね顔をしたが、面倒くさいので見て見ぬふりをして会計ボタンを押した。
食が進まなかったせいもあり会計は二人で1380円。借りを作るのは嫌だったので割り勘にしようと言ったが、彼は自分が出すと言った。結局彼が1000円を出し私が不足分の380円出した。店の外に出て、多めに支払いしてくれた礼を言うとベイビーは「いいよ。今度おごって!」と元気に言い放った。
(だから割り勘にしようと言ったじゃないか…310円多く払っただけで、次回おごらせるようとするとは…したたかなジャイアントベイビーめ!)と心の中で毒づいた私であった。彼とはその後何度か連絡し合ったが、ある日突然途絶え、私の15回目の出会いもエンドとなったのである。
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