抜け毛阻止活動

個人差がなく、みんなが平等にとっていくものが年齢である。年をとる時は嬉しかったり切なかったり、もうどうでも良くなったり、様々な感情が沸き上がるが、年代をまたぐ時は特別な勇気がいる。20代から30代、30代から40代、またいだ時は何故か、あぁついになってしまった…と、まるで犯罪者でもなってしまったかのような絶望感に襲われる。そして私はついに50代に突入してしまった。どうしよう…この前まで40代だったのにもう50代…そして次はきっとあっという間に60代だ。何も持っていない自分に気持ちばかりが焦る。歳をとる直前は毎年、大晦日のような焦燥感にかられながも、何のw行動も起こさず時の流れに身を任せたまま現在に至る。

40歳を過ぎたあたりから、体力の衰えや体形の変化、加速する顔のたるみ、徐々に増えるシミしわなど、老いの悩みが増え始めた。
同じ体を何十年も使用しているのだから、あちこち「がた」がくるのも当然の話である。家だって築50年も経てばオンボロ物件になるのだから。
今、私のなかで大きな割合を占める加齢の悩み。それは「抜け毛」である


もともと私の髪はハリにもコシにもみはなされた、力強さのかけらもない猫毛である。ブラッシングするだけで髪はプツプツと切れるし、ここ何年かは抜け毛も増えだした。ただ座っているだけで、散りゆく桜の花びらのようにハラハラと舞い落ちる抜け毛。職場では私の椅子の周りだけ、やけに毛が落ちている気がする。シャンプー後の排水溝など、ショックを受けるのが怖くて直視出来ない。何とかこの加速する抜け毛を阻止しなければ近い将来、女落ち武者になってしまう。私に必要なのは着物でも矢でもなく発毛情報だ!私は本格的に髪に関する情報集めを始め、効果がありそうなものは片っ端から試した。減り続ける毛量とはうらはらに増毛への情熱と執着心だけは日々増すばかりである。

髪にいいとされる海藻類や、たんぱく質が豊富な食べ物を意識して摂取するよう心掛けた。ある時、何かのサイトで発見した「キヌア」なる穀物を購入してみた。なんでもこのキヌア。髪の毛の主成分であるケラチンを生成し、女性ホルモンと似た働きをするフィトエストロゲンもあるため、抜け毛防止効果があるらしい。おまけに亜鉛の含有量も豊富という、増毛心をとことんくすぐる万能食材なのである。縮れ毛でも剛毛でも毛なら何でもかまわない。藁をもすがる思いでキヌアの到着を待った。
待ちに待ったキヌアが届き、高鳴る興奮を落ち着かせながら開封してみる。キヌアの見た目は2mm大の茶色い粒々で、昔飼ってたセキセイインコのエサみたいだな…というのが第一印象であった。さっそく茹でて、キュウリやトマト、茹でたささみと和え、ドレッシングで食してみる。初めての食感にかなり戸惑った。「ま、まずい……」料理の腕の問題なのか。はたまた欲張って量を入れすぎたのか…味のないトビッコ大のものが、大量に口の中にざらざらと入ってくる感覚は気持ちが悪いとしか言いようがない。トビッコの味なら喜んで食べるのだが、本当にセキセイインコの餌を食べたらこんな感じだろうな、と充分想像させられる味であった。とはいえ捨ててしまうのはもったいない。涙目で水とともに必死で流し込み、調理してない分は棚の奥に封印した。
たまに手前の砂糖を取り出すときに視界に入る事があり、残された大量のキヌア達の悲しい訴えが聞こえるような気がして目を反らしてしまう私であった。

一度は挫折した私だったが、やはりキヌアの成分は魅力的であり捨てがたい。他に匹敵するような食材もない。もう一度違う料理でチャレンジしてみようか…思い立った私は久々に棚の奥のキヌアを引っ張り出してみた。見ると賞味期限が2年以上も過ぎている。もう一度購入しようか悩み中の懲りない私であった。

コメント

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