℣IO脱毛

昔から毛深いのが悩みだった。しかも悲しいかなピンポイントでお股の毛だけが異常に濃く、広範囲にわたって生えていた。高校時代、友人とプールへ行き水着になった時、処理しそこねた毛があった。それを見た友人は「そんなところまで毛が生えてるの⁈そこ太ももじゃん!」と驚愕していた。実際場違いとしか言えない太ももにまで、太くて立派な縮れ毛が生えていたのだ。母親は体毛が薄かったのに、父親から毛深さを譲り受けてしまったらしい。私が毛深い事に悩んでいると、母は「毛深い子は優しいんだよ」となんの根拠もなさそうな慰めの言葉をかけてくれた。水も費用も与えてないのに、雑草よりもスクスク育つ陰毛を心の底から憎んだものだ。

あれから30年以上経ち、私はついにVIO脱毛に通った。今では美容脱毛は、エステや医療であたりまえのように行われている。昔はお股の毛の処理といったら家族の目を盗んで背中を丸め、カミソリで剃ったり、毛抜きで地道に抜いたりしていた。人には決して見せられぬ哀れな姿である。こんなに面倒で骨の折れる作業を、お金を払えば他人にやってもらえるのである。しかも自分では未知の領域だったIとO(陰部の両側と肛門の周辺)まで処理してくれるのだ。便利な世の中になったものだとしみじみ思う。必要なのは、勇気と羞恥心を捨てる事だけだ。
何軒かエステの初回お試しコースで脱毛体験をした。産婦人科方式で、お腹から下をカーテンで区切り行うところや、そよ風でも飛びそうな頼りない紙パンツを履き、横へずらしながら行うところやエステによって様々だった。結局は一番低価格だったことを理由にあるエステに決めた。

ついに私もツルツルデビューか!と浮足立ってエステへ向かった。医療で行うようなレーザー脱毛ではなく、専用ジェルを塗り光を照射し、毛の成長を抑制、減毛するものだった。定員さんの案内で個室に入る。そこには3畳ほどのスペースに、ベットと大きな脱毛の機器が置いてあった。「服は下だけ脱いで、ベットでお待ちくださいね」と言い店員さんは部屋を出て行った。私は下半身のみ裸になり、ベッドに仰向けに横たわると、バスタオルを下半身にかけ店員さんを待った。やがて店員さんが現れると、私の顔にタオルをかけ脱毛が始まった。煌々と照らされた照明の下で下半身まるだしというのは、最初はかなりの抵抗だった。あの頼りない紙パンツでさえ懐かしいと思ったものだ。あらかじめ自宅で、脱毛箇所を手の届くところだけ剃毛するよう言われていた。その処理した部分を股を開いたり、お尻周りはうつ伏せになったりしながら機械をあてて行くのだ。恥ずかしいやら申し訳ないやらで、いたたまれない気持ちでいっぱいになった。しかし今を乗り越えなければ、一生ボーボー女のままなのだ。頑張れ自分!頑張れお姉さん!と心で必死に声援を送った。そんな私の気も知らずに、店員のお姉さんは手慣れた様子で施術し、15分くらいで作業は終わった。痛みは、少し熱いかな?というくらいで全く気にならない。毎回違う人に股間をさらけ出すのは嫌なので、私は最初に当たったそのお姉さんを指名して脱毛に通った。

1年半かけて全部で18回通い、金額は確か合計4万円程だった。他のエステや医療脱毛よりかなり低価格だったと思う。どうしてやめたかというと、出口が見えなかったからだ。以前より毛の範囲も量も減ってはいるがゼロには程遠い。うっそうと茂った森から、ちょっとした林になったというところだろうか。生えるスピードや毛の頑丈さは、以前より少し衰えた気もするが、自己処理はやっぱり必要だ。そう、美容脱毛は医療脱毛と違って、金額も安いかわりに結果が見えにくいのだ。あと20回くらい行けば、もっと減ったかもしれないが、気力を失ってしまった。お金も惜しくなってしまった。大事なところを守る毛というのは要塞並みに逞しいと実感した私であった。

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