得意な事、一度聞いた星座と血液型を忘れない(特に役に立った事なし)
苦手な事、人付き合い…
私のような人間を最新の言葉で言うと「コミュ障」というのだろうか。だが私は昭和の女。新しい言葉や略語を気恥ずかしくて使えない。「なるはや」も「あけおめ」も言えないから普通に言っている。略語が蔓延すると、普通に「あけましておめでとう」と言う自分が古い人間に感じてしまう。同世代なのに、略語をさらりと取り入れて使える人を尊敬する。だが私が使うと、つぶやきシローなみにどもりそうだ。なのであえて自分は「非社交的」だと表現しよう。
職場の同僚や親せきなど、一定の距離を持って付き合う相手とはなんとかやって行けるのだが、それ以上の距離は縮められない。話の輪に入って行けない。消極的で友達もいない。友達と旅行に行くことは私にとって、52歳でグラビアアイドルデビューすることぐらい難しい。この先一生「友達とランチ」なんてないような気がする。
昔から、今自分の言葉で気を悪くしたかな…とか、私と話していて楽しいのかな…とか相手の反応に過敏になったり深読みしたりで、人と接した後はどっと気疲れしてしまう。人付き合いでちょっぴり傷つき、手酌酒が進んでしまった。そんなセンチメンタルエピソードをお話ししよう。
職場の同僚との話である。彼女はイギリス俳優のダニエルクレイグの大ファンであった。そんな彼女の強いすすめがあり「007カジノロワイヤル」を見た。ダニエルクレイグ扮する、ジェームズボンドの洗練された大人の魅力に、私も一気にダニエル熱が高まった。それから私たちは映画の最新作や、ダニエルクレイグの出演作の情報交換をするようになった。その日の昼休みもまた、私たちはダニエルの話で盛り上がっていた。彼女は「やっぱダニエルの、スタイリッシュでスマートな出で立ちと隆々とした筋肉は最高だよね~」と熱く語った。分かる分かる!と私も同意した。そしてその週末には待望の「007」の最新作が上映する予定だった。私は混雑が落ち着いてから行くつもりだったが、彼女はいち早く行きそうだ。私は尋ねてみた。
「今週末いよいよだね。行く?」
すると彼女は
「ごめん、友達と約束あるから行けないわ」
と手を合わせて申し訳なさそうに言ったのだ!「そうなんだね~」とすまし顔で対応した私だったが、脳内の私は「なんか誘ってもいないのに断られとる~!!」と頭を抱え絶叫していた。片思いの相手に告白を申し込んで、振られた時の3割増しくらいの傷つき具合であった。
私の母は小さなスナックを経営している。私は手伝ってはいないが、たまにカラオケを歌いがてら飲みに行っている。当然その時も1人である。その日も無性に工藤静香を歌いたくなり、スナックへ飲みに行った。
私がほろ酔いで気分よく「メタモルフォーゼ」を歌っていると、見覚えのある女性が1人で入って来た。私の1つ空いた席に座った彼女は「あら!2回目ですね」と笑顔で声をかけてくれた。葛城ゆきのようなハスキーな声が印象的な、温厚で優しそうな雰囲気の女性である。確か前回会ったのは半年ほど前だ。その時彼女は友達と3人で来ていた。今日はお互い1人だし同世代だし、もしかしたら仲良くなれるかも…と私は密かに期待していた。相手も酔っているし、上手くいけばライン交換ぐらい出来るかもしれないぞ…私は下心まるだしのスケベな中年おやじのように、ニタニタして話かけた。
「前に、翼の折れたエンジェル歌ってましたよね?また聞きたいな~」
すると間髪入れずに彼女は「こわっ!!」と、のけぞり言ったのだった。過去に1度会っただけの私が、歌った曲まで覚えていたのが不気味だったらしい。そのくらい、彼女のハスキーな声で歌う中村あゆみの歌は、魅力的で印象的だったのだ。その後お手洗いに席を立ち、再び戻った彼女は私から2つ空けて席に座った。その距離で無言の拒絶を悟った私であった。
買い物先での出来事だった。私がドラッグストアのコスメコーナーで下地を見ていると、同じく下地を見ていた女性がいた。なにげなく横を見るとなんと高校時代のバイト仲間であった。「もしかして…恵理…さん?」人違いだったら困ると思い、恐る恐る声をかけた。彼女も「え?うそ!久しぶり~!」とびっくりしていた。会うのは34年ぶりだったが面影は充分残っていて、一瞬で当時の思い出がよみがえった。私たちは学校こそ違ったが、バイト帰りによくご飯を食べに行ったり、ディスコやカラオケに行ったりと数えきれないほど遊んだものだった。お互いの近況を軽く報告し合い、私はライン交換しようよ!と申し出た。恵理も良いよ!と二つ返事だったのでライン交換をして、今度遊ぼうねと笑顔で手を振り別れた。
帰宅した私はさっそく「今日は久々に会えて嬉しかったよ。全然変わってないね」とラインした。すると少しして恵理からも「今日は久しぶりに会えて嬉しかったよ」とハートマーク付きで返信が来た。私は嬉しくなり「マジで今度遊ぼうよ!都合良い日教えてね」と送信し返事を待った。しかし5分おきにラインを見ても、一向に既読にならない。恵理は子供も夫もいるし忙しいのだろう。暇人の私とは違うのだ…と気長につ事にした。そして気長に待つ事一週間、ついに私のメッセージが既読になる事はなかったそうな。


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